新潟国際アニメーション映画祭レポート:大前奨平
- 文
- 大前奨平
2026年2月、第二期・第三期公募枠作家の大前奨平、副島しのぶが、第4回新潟国際アニメーション映画祭「新潟・アニメーションキャンプ」へ参加しました。この記事では、大前奨平によるレポートをお届けします。
大前奨平によるレポート
2月20日から25日までの6日間、第4回新潟国際アニメーション映画祭に参加させていただきました!
NeW NeWからは映画祭の全期間に参加するのは一人だけで、さらに何をするのかもよく分からないまま向かうことになったため、何とも言えない不安と緊張を抱えての出発でした。
とはいえ一人という気楽さもあり、まあ何とかなるだろうと呑気に構えていたのですが、初日から新幹線のチケットを取らないまま東京駅に集合してしまうというミス…。発車3分前に慌ててチケットを買い、駆け込み乗車になる寸前のところで何とか飛び乗ることに。。(駆け込み乗車はダメ!絶対!!)
そんな調子で、新潟へ向かう旅が始まりました。

ちなみに今回このレポートを書いているのは、名前を聞いてもピンと来ない方が多いかもしれませんが、NeW NeW第二期採択作家の大前奨平と申します。どうぞ最後までお付き合いください。

本映画祭には、いわゆる商業的な長編作品を上映する映画祭という印象を持っていました。
しかし実際に参加してみると、重厚なメッセージを放つ長編コンペ作品から、今年新設された中編部門まで、幅広いジャンルの作品が上映されていました。当初抱いていた印象とは少し異なり、商業性と芸術性、そして多様なテーマの作品が共存する映画祭の新たな一面を垣間見ることができたように思います。
そして何より濃密だったのが、監督やスタッフの皆さん、そして「新潟アニメーションキャンプ」の一員として国内外から参加していた若い才能(作家や学生たち)との交流でした。
想像していた以上に濃密な6日間で、情報量も多く、すべてをまとめるのはなかなか難しいのですが、特に印象に残った方々との出会いや出来事を、ここで少し振り返ってみたいと思います。

とにかくユーモアにあふれ、まるでアニメーションから飛び出してきたかのようなそのキャラクターは、映画祭の場でもひときわ魅力的に映りました。
奥様が「日常ではちょっと“too much”だけどね」と笑いながら話されていたのも面白かったです。
講義では新作のプレゼンもしていただきましたが、これが本当に面白い!分かりやすく飽きさせない工夫が随所にあり、合間には社会的なメッセージもさりげなく挟まれています。これまでの映画祭やマーケットで苦労された話も交えつつ、多くの試行錯誤を経て今作に辿り着いたことが伝わってきました。
さらに今回はNeW NeWの案件として個別インタビューもさせていただきました。
拙い英語での質問にも丁寧に答えてくださり、本当にありがたかったです。

アヴィッドとはまた違った方向にユーモアが炸裂していたクリス。
一言話すたびに笑いが起き、話を聞いているだけで楽しくなる愉快な方でした。
もちろん愉快なだけではなく、長年培ってきた確かな技術や積み重ねたキャリア、そして学生たちに寄り添う姿勢があるからこそ、言葉には自然と説得力がありました。アニメーションを学校で学んでこなかった自分にとっては、多くの学びが詰まった時間でした。
制作中の作品を見てもらう際、自信の無さと謙遜から「まだつまらない作品ですが……」と切り出すと、「そんなことは決して言ってはいけないよ!」と一喝。思わず指切りの誓いをすることになりました。
この歳で指切りをするとは思ってもいませんでしたが、温かい小指からエールを受け取っているようで、なんだかとても嬉しかったです。

スペイン語圏の国々と日本の文化をつなぐ仕事に長く関わってこられ、今回は主にEUと日本、ラテンアメリカの関わりについて話されていました。
柔和で穏やかな雰囲気をまといながらも、内面では鋭い視点で物事を捉えている様子から、知的な印象とともにどこか少し怖さのようなものも感じました。
交流の際、ピッチについて質問すると、本質を突いた明確な答えが返ってきて、とても勉強になりました。
また、タイから参加していた学生が「母国で映画祭を開催したいが、集客や場所の確保が難しい」と相談したところ、ご自身の経験をもとに丁寧かつ具体的なアドバイスをされていたのも印象的でした。

「キャンプ」の子たちに向けて、特別講義を開いてくださいました。
制作において大切な、他者との関わり方や自身の意識・姿勢のあり方など、とても基本的なことではありますが、個人で制作している自分にとっては、なかなか実践できていないことばかりで、丁寧に語られる一つひとつの言葉が心に深く残りました。
今回の講演を最後に退任されるとのことで、その場に立ち会えたこと自体が、とても貴重な経験でした。

現在制作中の新作について話されていました。
いま話をされているのは国文学者の方かな?と勘違いしてしまうほど、史料や実地調査を徹底的に重ね、緻密に作品を作り上げている様子がひしひしと伝わってきました。
内心、調べすぎでは…? と思うほど細部まで追究されていたのですが、「深く調べることで、当時の人々の生活や心情が浮き彫りになり、さらに表現の選択肢も広がる」と話され、なるほどと納得したとともに、自身の制作に対する甘さを少し反省してしまう瞬間でもありました。

大前と同じくNeW NeWから参加されていた副島さん。
滞在はわずか3日間でしたが、個人的にはとても心強い存在でした。
2日目の夜には、副島さんと(コーディネーターの)尾関さんの3人で一日の振り返りをする時間がありました。理路整然と自身の考えを語る姿からは、納得がいくまで徹底的に思考を深め、それを作品へと昇華させているようでした。感覚的に捉えがちな自分とは対照的で、話しているうちに普段使っていない脳の一部が活性化するような、とても刺激的な時間でした。
今回の滞在の中でも特に密な時間で、気づけば2時間以上話していたような…。
翌日の帰り道、副島さんと尾関さん、(CG-ARTSの)本間さんと渡った萬代橋がとても気持ちよかったです!✝️

新千歳空港国際アニメーション映画祭の小野朋子さんと鎌上佑さんもいらっしゃっており、尾関さんと一緒に4人で夕食をいただきました🍶
映画祭についてのあんなことやこんなことまで、たくさんお話を伺えて楽しい時間でした。
ありがとうございました!ごちそうさまでした。

参加者は30名ほどで、特にアジア圏からの若い作家や学生が多く集まっていました。
上映や講演のあとには、監督に次々と質問が飛び交い、皆とても貪欲に交流していました。
アニメーション制作そのものを楽しみながら前向きに挑戦している姿からは、大きなエネルギーをもらい、見習いたいこともたくさんありました。
もし自分も10代や20代前半の頃に参加できていたら、もっと多くのことを吸収できていたのかなと、ふと想像してしまう場面もありました。

スケジュールの都合で長編は2作しか観られませんでしたが、
『Allah Is Not Obliged(アラーの神にもいわれはない)』と『Nimuendajú(ニムエンダジュ)』はどちらも重厚な内容で、とても見応えがありました。

『ニムエンダジュ』の監督、タニア・アナヤ氏と交流する機会もありました。
ブラジルの方ゆえ ポルトガル語が主で話されるため、通訳や翻訳ツールに頼る場面も多かったのですが、それでも一つひとつ丁寧に説明しようとする姿勢がとても印象的でした。その誠実さに触れるうち、人柄にも自然と惹かれていきました。
残念ながら作品は観られなかったのですが、『ディプロドクス ~恐竜とボク~』の監督、ヴォイテク・ヴァブシュチク氏とも交流する機会がありました。1980年代に出版されたポーランドのマンガを原作としたこの作品は、同国初の3DCG長編アニメーションで、実写とアニメーションを融合させた意欲作だそうです。
どこかで上映されないかな。

中編では、
『Winter in March(ウィンター・イン・マーチ)』、『Autokar(オートカー)』、
『The Popstar Water Deer and I(ザ・ポップスター・ウォーター・ディアー・アンド・アイ)』
などが特に印象的で、どの作品も物語の妙と映像表現の技術を兼ね備えており、見応えのある作品たちでした。


長いようで、あっという間の6日間でした。
映画や映画祭、映画館のことを語る皆さんの言葉には、強い情熱とエネルギーがあふれていました。
他の作家の方々のように多くの映画祭を経験してきたわけではありませんが、いくつか参加する中で感じたのは、映画祭とは映画という作品をきっかけに、人と人が語り合い、交流できる場でもあるのだなということです。普段はほとんど一人で制作しているため、他人と交流すること自体に少し(かなり)抵抗を感じることもありますが、それでも思い切って参加してみると、新しい出会いや時には友情が生まれ、来てよかったなと思えることの方がずっと多い気がしました。来たときは一人でも、帰る頃には(何かしら共通点を持った人たちと)何人か友達になっている。そんな体験はなかなか得難いものだと思います。
今回の映画祭に限らず、今後もいろいろな映画祭に参加できたら嬉しいですね。
それから、映画祭はとにかくよく歩く印象があります。
結果的にとても健康的な生活になるのも、密かな醍醐味かもしれません。



最後になりますが、コーディネーターとして連日サポートしてくださった尾関さんには本当に感謝しています。
最終日まで付き添ってくださり、とても心強い存在でした。
改めて、ありがとうございました。
おしまい