新潟国際アニメーション映画祭レポート:副島しのぶ
- 文
- 副島しのぶ
2026年2月、第二期・第三期公募枠作家の大前奨平、副島しのぶが、第4回新潟国際アニメーション映画祭「新潟・アニメーションキャンプ」へ参加しました。この記事では、副島しのぶによるレポートをお届けします。
副島しのぶによるレポート
新潟国際アニメーション映画祭(NIAFF)については、初回開催以来、あらゆる所で耳にすることがありましたが、今回、「新潟アニメーションキャンプ」メンバーとして、初めて参加することとなりました。
映画祭といえば、ネットワーキングがつきものです。あまり社交の得意でない自分ですが、レセプションパーティでNIAFFの元気なスタッフさんに文字通り背中を押されて、ポーランドのWojtek Wawszczykさんとお話しする機会を得ました。
Wojtek さんは、今回自身の初の長編アニメーション『ディプロドクス〜恐竜とボク〜』でNIAFFの長編コンペティションに入選し、来日した監督です。彼は一つの質問から多方面へと話を広げてくださり(ありがたい)、自分にとって子供の頃から大好きだった原作をアニメーション化するという企画だったこと。長い時間をかけて大事に育ててきたこの企画がビジネスになったとき、監督である自分の手元から離れて編集されてしまう困難さ、その向き合い方、そしてNIAFFのような場でディレクターズカット版を発表する喜びなど、率直な気持ちをキャンプ参加者の私たちに共有してくださいました。
そんな中、まだ彼の作品を拝見できていなかった私は、この機会にピッチのコツを伺ってみることにしました。そこで印象的だったのが、Wojtekさん曰く、ピッチを行うときに一番大事なことは、なぜ「自分がこの作品を作りたいのか」を伝えること、それは言い換えると、「この作品を作らなかったら、自分はどうなってしまうのか(What happens if I didn’t make this film?)」を自分に問いかけ、発見することだそうです。
私は自分の作品を語るとき、理屈っぽいというべきか、鳥の目視点というか、なんだか、自分の内面と距離をおいて作品を語る癖がついてます。学部時代はいわゆる現代美術の分野を学んでいたためか、アニメーションの世界に入ってからも、パーソナルなモチベーションと作品自体のテーマを切り分けて、対外的に作品の解説を編集する訓練をこれまでの美術教育の中で学んできたように思います。
そんな中、今回、私がNeW NeW公募枠選考のオンライン面談にて様々な国のアドバイザーから指摘されたのは、この企画において、どこに作者である私を位置づけ、どの視点で語るのか、ということです。私は彼らの指摘をとても適切なものだと感じていましたが、一方で、自分自身の存在を作品の中で位置づけることへの困難さも覚え、多少の混乱も感じていました。
Wojtekさんの「この作品を作らないと自分はどうなるのか」という視点は、この違和感に対して何かヒントをくれたように感じます。
ここでは詳しい話は割愛しますが、私の採択企画は、私が今住む町に、かつていた、今は存在しない、無かったことにされた人々の物語です。幼い頃から東南アジアに住んでいた自分にとって、彼女たちの出自である国々と、自分の国との歴史的負の遺産に敏感にならざるをえなく、そこから、今自分が住んでいる町で地続きにつながる「食って」「食われる」構造の問題を考えざるを得ませんでした。私は決して彼女たちにはなれませんが、彼女たちの隣に立ち、共感し、彼女たちを思い学び、戦うことは、まるで自分の親しい友人を大切に思うことのように、私にとって必然的なことでした。
今の時点で、まだうまく言語化できないのですが、私のその個人的な動機が、今自分の住まう町に、かつていた彼女たちの存在を想像せずにはいられなくしていると思います。
「この作品を作らなかったら、自分はどうなってしまうのか」という視点は、一見内省的な問いかけにも捉えられますが、作品の物語と作者の物語が交差する地点を導き出し、作り手の言葉を素直にさせるような、そんな魔法の言葉のようでした。
さて、NIAFFの話に戻りましょう。
私にとってもう一つ印象的な出来事は、夜にロビーで集まって行った、その日の振り返りです。ちょうど片渕須直さんの講演会を聞き終わったあとに軽くお話ししようと、第2期採択作家の大前奨平さんと、NeW NeWコーディネーターの尾関さんと、夜21時から集まりました。
片渕さんの講演に出てきた話題から、アニメーションを作る過程で一番楽しく感じる瞬間、その日に観た長編作品の感想まで、幅広くお話しし、部屋に戻った頃には日付を越えていました。このように、お互いの作品についてや、映画祭で見た作品の感想などを、あまり肩肘張らずに共有できるとは思っていなかったので、なんだか映画祭がとても居心地の良いものに感じられました。
あいにく、6日間の開催のうち私は2泊3日の滞在となりましたが、それでも毎日充実した経験を得ることができました。
次の旅も、今から楽しみです!
