第一期最終レポート:ひらのりょう
- 文
- ひらのりょう
2025年11月末にて、第一期の活動期間が終了いたしました。この記事では、第一期公募枠の採択者の一人である、ひらのりょうによる活動の最終レポート記事をお届けします。
ひらのりょうによるレポート
NeW NeW第一期の育成期間が終了した。
なんか募集はじまったな~…ダメ元で一応送るかな、いやあ、めんどくせえな……。でも一応なんか送るか、何もやらないよりかはなんかやったほうがいいからな……。とベッドから抜け出して企画書をこさえてから、あっという間に一年が過ぎた。
第一期生。前例のない事業なので、どんなことをやるのか細かい部分は分かってなかった。とにかく今の企画を現実に近づけるために、映画祭へ出向き、企画書や脚本をブラッシュアップしていく。それが主な内容だ。
「ということで、脚本などの制作プロセスはすべてお互いに共有します。」
今まで、ほとんど個人で制作していた自分としては、これが一番しんどかったかもしれない。ブラッシュアップされてないものを人目に晒すのは、とにかく恥ずかしいものだ。誰かの進み具合に対する焦燥感に押しつぶされる感覚もよく知っている。その焦燥感から空転を繰り返し身動きが取れなくなる自分を嫌というほどみてきた。うまくやっていけるか不安になった。
NeW NeW活動の大きな柱の一つとして、映画祭ツアーがある。新潟国際アニメーション映画祭に始まり、ザグレブ、アヌシーのヨーロッパツアー。オタワ、モントリオールのカナダツアー。最後は新千歳空港国際アニメーション映画祭。これだけの映画祭を回って何をするかといえば、プロデューサーを見つけるための”ピッチ(プレゼン)”や、国際的なつながりを作る”ネットワーキング”。加えてベテランアーティストにインタビューするという活動もある。
一番のハードルは、やはりピッチだろう。人前で、英語で、自作の魅力を語るのだ。少なくとも自分が受けてきた美術教育の過程において、ピッチを学ぶ機会はなかった。なので、完全に手探りだ。ピッチ用に数秒のデモ映像を作り上げるのに必死で、構成を組み上げ原稿を機械翻訳したところで出発のタイミングになってしまう。
ザグレブ国際アニメーション映画祭では、ショートバージョンの簡単なピッチを行った。事前に用意した英語原稿を読み上げただけで、なんだか会場が微妙な空気になってしまった。微妙な空気って国境を越えるんだな、と思った。 最初の本格的なピッチは、世界最大規模のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭。いきなりですか、という気持ちになる。事前に他者のピッチをいくつか見て、原稿を読み上げている人なんてほぼいなかった。そりゃそうだよな、と思ってそこから自分の言葉に原稿を書き換え、ホテルで時間を測りながら練習を繰り返す。つかみのジョークをいくつも考える。そうやって本番を迎える。

ピッチ自体はなんとかうまくいく。用意してきたジョークもちゃんとウケた。朝9時という時間にも関わらず人が集まってくれたのは、ツアーに帯同してくれた、既に世界的に活躍している推薦作家の3人のおかげだ。なにより、映画祭に参加していた友人たちが集まってくれたのが嬉しかった。このツアーでは、Instagramだけで繋がっていた友人に会えたり、何年ぶりかに再会する友人も多くて、そこから新しい繋がりが生まれたり。そういう掛け替えのない時間を過ごすことができた。『アドベンチャー・タイム』のペンデルトン・ウォードさんと、『スティーブン・ユニバース』のレベッカ・シュガーさんと3人でアヌシーのカフェでチルアウトしてたなんて、自分でも驚く。
ピッチが終わったタイミングでデモ映像をSNSに公開した。アルゴリズムの関係か、アニメーション関連の投稿がフィードに上がりやすくなっていたので。結果的にはその投稿が広がり、SNSから色んな人がコンタクトしてくれる形になった。これもピッチの準備の賜物ではある。けど、何がどう繋がるか戦略的に考えたところで分からんな、と思った。分からないので、楽しくやるしかない。
書くのを忘れていたけど、NeW NeWに参加する上で、自分なりの目標を掲げていた。それが『たのしくつくる』だ。これは自分が苦手としていることで、制作に追い込まれると、作っているものが陳腐に感じたり、下手すぎて絶望したり……といった苦痛の波が際限なくやってくる。この繰り返しはもうやめたい。だから、どうやったら『たのしくつくる』ことができるのかを考えたい。NeW NeWを通して完全に答えが出たわけではないけど、この苦痛の原因の多くは「自分をよく見せようとしたこと」に起因していることは分かった。
だから、プロセスを見せ合ったり、ピッチで失敗したり、他人に相談したりすることをせざるを得ない環境をつくりだしてくれるNeW NeWはとてもありがたかった。正直言って、大変なハードルがいくつもある。人前で話すのだって、パーティで社交するのだってそんなに得意じゃない。下戸でもある。それでも、誰かと話して自分の悩みを聞いてもらったり、相談事ができるようになった。それが、良かった。この年齢でやっとか、という思いもあるけど、このまま歳を重ねていたらもっと大変なことになっていただろう。
作品の準備過程として、劇作家・演出家で劇団「ロロ」主宰の三浦直之さんに脚本のアドバイスをもらうこともできた。三浦さんは長年付き合いのある友人ではあるが、プロとしてアドバイスをもらえるのは貴重だ。物語の構造の話やキャラクターが何を担うのかなど、細かい指摘・分析をしていただいた。自分が考えてもいなかった視点は、本当にありがたい。作品に強力なエンジンを付け加えてもらった気持ちだ。
映画祭を回って、観た作品から受けた影響もたくさんある。既に活躍している作家さんへのインタビューを通して、作品づくりの態度を考え直すきっかけも多かった。インタビュー記事は公開されているので読んでみてほしい(あれ、がんばった!それぞれがなにを質問するか事前に作戦会議したり、緊張したり、しかも全部通訳なしでやってるんだ!)。 みんなそれぞれ違うので、情報過多でプチパニックになる部分も正直あるが、新しい制作プロセスを試してみたりもしている。


そんなわけで、最終レポートとしてはいささかざっくばらんというか、書ききれない部分が多すぎるのでここらで締めたいのだけれど、新作『NIGHT IN THE EYEWALL』の制作は続いている。たのしくつくれるように、今後も失敗を含めたプロセスを自分のホームページ(ryohirano.com)で公開していきたい。この記事を読んでる人はどのくらいいるのだろうか?読んでくれているみなさんへ、もしよかったら今後も見守ってね。