「NeW NeW」第一期公募採択者月次面談第三回レポート

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参加アーティスト
金子勲矩
関口和希
ひらのりょう
コーディネートチーム
土居伸彰(総合プロデューサー)
相原裕美(コーディネーター)
尾関加純(コーディネーター)
田中大裕(コーディネーター)
事務局
CG-ARTS
ホワイト健

第一期公募枠採択アーティストを対象とした月次面談(4月)が、オンラインにて実施されました。

最初の議題は、ひらのりょう・金子勲矩・関口和希それぞれの新作企画の進捗状況と、6月に予定されている欧州ツアーおよびピッチに向けた準備についてです。

アヌシー国際アニメーション映画祭併設の見本市・MIFAで行われるピッチに向けて、10分程度の持ち時間でどのようなプレゼンテーションを行うか、イメージ素材やテストアニメーションなどの資料をどのように準備すべきかについて詳細な検討がなされました。本番は英語でプレゼンテーションをする必要があることから、双方向的なコミュニケーションや視覚的な素材の活用など、聴衆の興味を引くために効果的な工夫が求められます。また、求めるパートナー像を明確に伝えることも重要です。「NeW NeW」公募枠への応募時に積んだプレゼンテーションの経験も踏まえ、将来のパートナーに向けてより適切な形でアピールするために何を工夫すべきかが明らかになったようです。

後半、公募枠採択アーティストの三名に土居伸彰を交えた四人で、それぞれの脚本に関する意見交換が行われ、内容のさらなる向上に向けて話し合われました。

『NIGHT IN THE EYEWALL』(ひらのりょう新作企画)の脚本については、台風によって外出できなくなった旅館という閉鎖空間を活かした世界観や演出に加え、登場人物の意外な組み合わせによって引き込まれる作品になっていると好評でした。他方でキャラクターの背景をもう少し描き込むことで、さらに観客の感情に訴えかけられるのではないかという指摘が寄せられました。自然と人間の複雑な関係性を描くことが特に重要となる本作。各キャラクターが自然との関係を象徴するように設計することで、より観客の想像力を掻き立てられるかもしれないとのことです。さら物語にまとまりがあり、完成度はすでに高いため、今後は綺麗に収めるよりも、むしろ要素を加えることでより深みを伴った魅力的な物語になるのではないかと、さらなる向上の可能性が示されました。

『ウサギとカニ』(金子勲炬新作企画)の脚本については、ジャンル映画的なユニークさや、文字で読んだだけでも意外性を感じさせる意表を突いた表現、「カニを食べるウサギが存在する島」というファンタジーな魅力溢れる世界観に好意的な感想が寄せられました。物語には「カニタバコ」のようなインパクトあるモチーフが登場するため、これらの描写を視覚的に強調することで、現実離れした世界観に観客が着いていけなくなる事態を防ぐと同時に、ともすれば突飛とも言える独創性を保ちつつも、観客を結末により深く感情移入させられるのではないかとの提案も。金子の個性とも言えるユニークかつ印象深い設定や表現をさらに尖らせ、より一層没入感のある映像に仕上げることで、観客を魅了する衝撃と独創性にさらに磨きがかかるであろう期待感が話し合いの場に広がっていました。

『アニメーション作家のねこちゃん』(関口和希新作企画)の脚本については、「嫉妬」というテーマを丁寧に掘り下げる描写力や私小説的で共感を得やすいナラティブ、感情表現豊かなキャラクター造形に好意的なコメントが寄せられました。主人公がとても感情移入しやすい人物となっているため、今後はライバルにあたるキャラクターを含めた周辺人物の感情の流れを明確にすることで、さらに観客の胸を打つだろうとの指摘も。また、物語のキーとなる「火」のようなモチーフを、ライターなど身近な小道具を通してキャラクターの行動や性格と結びつけることで、観客をその後の展開へとスムーズに導く象徴的な演出として機能させられるかもしれないという発見もありました。極端な表現にも積極的に取り組むことで、より広いオーディエンスに訴求できる作品になるのではないかとの結論に至りました。

来月実施される次回月次面談は欧州ツアー前の最後の月次面談になります。公募枠採択アーティストたちはピッチや関係者とのネットワーキングに向け、スライド資料や英語原稿の準備、脚本のさらなるブラッシュアップなどに取り組んでいきます。