レクチャー「第一期公募枠作家たちが見た2025年のザグレブとアヌシー」レポート
- 執筆・編集
- 土居伸彰
- 登壇
- ひらのりょう
関口和希
金子勲矩
司会:土居伸彰

2025年6月30日(月)、NeW NeWスクールの一環として開催されたオンライントークイベント「第一期公募枠作家の視点から振り返る、2025年ザグレブ&アヌシー報告」。先日公開した第二部「第一期公募枠作家たちはいかにして新作をブラッシュアップし、ピッチしたか」に続き、第一部「第一期公募枠作家たちが見た2025年のザグレブとアヌシー」のレポートをお届けします。登壇者は第一期公募枠作家の3名(金子勲矩、関口和希、ひらのりょう)。司会はNeW NeWプロデューサーの土居伸彰です。
ザグレブ国際アニメーション映画祭(Animafest Zagreb)
土居伸彰
今日のイベントでは、NeW NeWの第一期公募枠作家のみなさんが6月に行った、ザグレブ、アヌシー、パリへのツアー報告を行っていただきます。ほぼ3週間にわたるこのツアーでは、様々なトラブルもありましたが、参加作家の皆さんにその体験を共有していただくことで、映画祭がどのような場所であるかをお伝えできればと考えています。
まず、ザグレブ国際アニメーション映画祭(Animafest Zagreb)から始めましょう。ザグレブは、1972年設立の歴史ある映画祭で、「フィルムメーカーのための映画祭」を掲げています。一般的にアニメーション映画祭といえばアヌシーが真っ先に挙がりますが、かつてはアヌシーに加えて、ザグレブ、オタワ国際アニメーション映画祭、広島国際アニメーション映画祭の4つが「世界4大アニメーション映画祭」と言われていたこともありました。ザグレブとアヌシーは、映画祭間の暗黙の了解で、ザグレブが6月の第1週、アヌシーが第2週と会期がつながるかたちで開催されています。映画祭の性質としては正反対で、アヌシーが商業化に成功しプロデューサーや関連業界の人々も集まる場所になったのに対し、ザグレブはアニメーションの芸術性を評価する場として、作家たちの思いの中で作られてきたアニメーション映画祭の原型を体験できる「古き良き」場であるといえます。アヌシーは現状あまりに規模が大きすぎて、初めての人とつながりあったり友達になったりするのが難しいので、まずは比較的小規模なザグレブに参加してもらうことで「作家」として同じ立場の人たちとつながりを作るのがよいだろうと考え、両方の映画祭に行ってもらっています。ザグレブについて、みなさんの印象はどうでしたか?
金子勲矩
初めて訪問したのですが、その後に行ったアヌシーに比べると手作り感があるというか、非常にアットホームな雰囲気の映画祭だと感じました。
関口和希
10年ほど前に一度訪れたことがありましたが、その時は付き添いで行ったため記憶が曖昧でした。今回改めて自分の上映や目的のために訪れて「こんな町だったんだ」と確認しながら歩くのがとても楽しかったです。少し学園祭のような温かさと可愛らしい空気を感じつつ、作品のセレクションも面白くて楽しめました。
ひらのりょう
ザグレブというかクロアチア自体が初めての訪問でした。映画祭についてはお二人の感想と同じですが、とにかく暑かったのが印象的です。日差しも強く、映画館は冷房が効いておらず、上映中はサウナ状態を耐えながら映画を見るという修行のような映画祭でした。しかし、印象に残る作品が多く、作家さん同士の距離が本当に近いのが良い印象でした。映画館に並んでいる間や、ちょっとしたパーティーに参加した後など、すれ違うと顔見知りになったような感覚で話ができ、その距離感がとても良い映画祭でした。
土居
たしかにこの時期にヨーロッパの映画祭に参加するには、暑さは覚悟しなければなりません。本来は冷房が必要ない地域が地球温暖化の影響で高温化してしまっており、冷房設備が追いついていない場合があります。宿泊場所も、ホテルならだいたい大丈夫ですが、民泊を利用する場合は気をつける必要があります。
作家インタビューという積極性の方法論
土居
ザグレブは作家たちが集まる映画祭ということで、ネットワーキングの一環として、現地にいる著名な作家たちにインタビュー取材をしてもらいました。シーンを引っ張る作家たちの制作の手法や生き様を聞いてもらうことで、いろいろな学びがあるように、世代も国も違う3名に依頼しました。
まず、韓国のハン・ジウォン監督です。元々は短編作家としてスタートしつつ、現在は長編の制作に取り組んでいます。韓国アニメーション界にとって初めてのネットフリックス・オリジナル長編『あの星に君がいる』が5月末に配信スタートしたばかりというタイミングでもありました。ハン・ジウォン監督は皆さんと同じ世代に近いので、アジア圏で同じ境遇の作家としてぜひ会ってほしいと思いました。短編作家が長編に挑戦する事例も世界的に増えてきていますし、キャリアパス的にも参考になるのではないかと。話してみて何か学んだことや見えたことはありましたか?
金子
すごく気さくに喋っていただいて、とてもエネルギッシュで良い方でした。彼女はNetflixで長編アニメーションをグループで制作しており、短編を製作している僕らとは違う挑戦をしており、同じ年代なのに違う領域で活躍している人だと感じました。
ひらの
ザグレブは中日(なかび)にゲストが参加できるピクニックがあるのですが、インタビューの前にそこで話ができたのがよかったです。いまは商業的にしっかり作品を作られている方ですが、短編作品も大好きだと話していて、短編にも長編にも違う魅力があり、どちらも楽しいので、両方ともやっていきたいという話を聞けたのがよかったです。
土居
次はチェコの大巨匠、ミカエラ・パブラートヴァーさんです。今回、ザグレブでは栄誉賞を受賞して、特別ゲストとして呼ばれていました。
ひらの
今回、往路の飛行機がキャンセルになるなどしてザグレブへの到着が遅れてしまったこともあり、作家インタビューが毎日ある状態になってしまい、質問を考える余裕もなくインタビューが来るような状況でした。でも、ミカエラさんは僕らに質問する隙を与えないくらい積極的に話してくれました。僕らそれぞれの作家としての境遇や、活動状況も聞いてくれて、とても親身な方でした。チェコで大学の先生もされているので、本当に良い先生とお話しできたという感じです。作家として活動する上での生活費の稼ぎ方や、田舎での暮らしなど、地に足のついた「作家としてどう生きていくか」という話を親身になってしてくださった印象です。
関口
ご本人のマスタークラス直後のインタビューだったのでとてもお疲れだったはずなのに、むしろこちらを立ててくれるくらいの感じで話してくださいました。私が子供を育てながら作品を作っていることを尊敬するとおっしゃってくださり、とても嬉しかったです。
金子
お二人が言われた通り、先生をされている方だからか、非常に親身に質問に答えてくださいました。インタビューのようにただ質問に答えるだけでなく、対話形式でお話しいただけたのが印象的でした。絵のスタイルをどのように決めているのか質問したところ、観客に与える印象がどうなるか予想して考えている、という具体的な話までしていただき、非常に充実した時間でした。
土居
短編アニメーション界には良い意味であまり上下関係がありません。巨匠と若手が肩を並べて、飾らずに話せる雰囲気を持った作家さんが非常に多いです。皆さんも年を重ねていく上でのモデルの一人として見てもらえたら嬉しいです。
さらに、ハン・ジウォンさんとミカエラさんの中間くらいの世代として、フランスのオスマン・セルフォン監督にも話してもらいました。オスマンさんはどうでしたか?
金子
すごく気さくな方で、フレンドリーでした。僕らを笑わせるようなジョークを飛ばしながら、ずっと英語で途切れることなく話してくれる方でした。とても楽しい方で、また会ったらもう少し話してみたいと思いました。作品作りについても共感できることが多く、非常に良い時間でした。
関口
「なんでこんなに目を大きく描いたのか」とか「なんで歯を点々で描いたのか」などの細かい質問にも親身に答えてくれて、良い作家さんは人間性も素晴らしいんだなと思いました。こちらが1つ聞いたら100倍くらいにして返してくれるような……
ひらの
いや、本当そうでしたね。1つ質問したら、もうマイクが戻ってこないというか、ずっと話してくださって。しかもめちゃくちゃジョーク好きな感じというか。作品もブラックコメディー的な要素が非常に多い作家さんなんですが、感情を動かす作品を作るという意味で、どうお客さんをマニピュレートするかという話が印象的でした。脚本やビデオコンテの段階で仕掛けづくりをとにかく入念にやるという話もしてくださって、プリプロはすごく重要なことなんだなというのを改めて教えてもらいました。
土居
3名へのインタビューの様子は、今後NeW NeWのサイトでレポート記事化して公開する予定ですので、みなさんお楽しみに。インタビューをすること自体もトレーニングプログラムの一環として、映画祭に主体的に参加する方法として行っています。元々すごくファンであるというのではない作家についても調べてみることで、新たな発見があるはずですし、映画祭に参加するときは下調べや前準備をすることで、実際の体験がものすごくレベルアップするんです。事前に誰が来るのかを調べて、もし会ったらこういうことを聞いてみようと考えることが重要だと感じています。実際に話す機会がなくても、調べて考えて言語化することでアニメーションの見方も深まります。それに、映画祭界隈は小さなコミュニティなので、そのコミュニティに入っていくためには、先行している人たちのことを調べていくのもとても重要です。
アヌシー国際アニメーション映画祭
土居
ザグレブの後、アヌシー国際アニメーション映画祭に参加してもらいました。アヌシーは1960年に設立された世界最大最古のアニメーション映画祭です。芸術性重視だったアニメーション映画祭のなかでいち早く商業性を前面に押し出し、マーケット(MIFA)を併設し、近年ではハリウッドや日本アニメも積極的に招聘することで、唯一無二の映画祭に成長しました。
アヌシーはどのような印象でしたか?
関口
泊まったホテルが上映会場からバスで30分かかるところにあり、移動が毎回大変でした。バスも冷房が効いておらずとても暑かったです。でも、本当に綺麗な場所で、最初に着いたときには「ここは天国かな?」と思いました。
ひらの
3回目のアヌシー参加ですが、やはり景色の美しさに心を奪われ、どうにかしてまた戻ってきたいと思いました。規模もどんどん大きくなっていて、街ですれ違う人がみな映画祭関係者という感じでした。
金子
映画祭の他にもMIFAという大きなマーケットがあり、とにかくその規模の大きさに圧倒されました。見たいプログラムが山ほどあるのに、非公式のパーティーも多数あって、一体どこから何をどうしていいのか分からず、ただただ圧倒された1週間でした。
土居
ザグレブは頑張ればほぼすべての上映プログラムを見たり、全員のゲストと知り合えたりするかもしれません。でも、アヌシーではそれは不可能です。作家だけではなく、様々な目的を持った人たちが集まるごった煮の映画祭です。金子さんが言及したMIFAは、メインの上映会場から少し離れた高級ホテルに特設会場が設けられて行われます。ブース出展の場所もあり、NeW NeWもジャパンブース内で展示を行いました。プロデューサーの中には、映画祭に来ても上映をほとんど見ずに、朝から晩までミーティングを入れ続ける人も多いです。
オフィシャルな上映プログラムやマーケットのほかにも、アヌシーでは無数のパーティーが開催されています。お金を出して会場を借りるものから、有志が市内のレストランを借りたり湖畔の公園を占拠したりして開催される野良のパーティーもあります。そんな「社交」の場で、みなさんのネットワーキングは捗りましたか?
関口
すごく捗りました。目が合った人とひたすら喋っていく、という感じでした。英語がペラペラな人が相手だとちょっと申し訳なく思ってしまうのですが、相手もそんなに英語ができない人だと、お互いに手探りで原始的なコミュニケーションでのやりとりができるということに気づきました。それが楽しかったです。
土居
その気付きは本当に重要です。日本人は英語が流暢でないと申し訳なく思いがちですが、映画祭における英語は伝われば良いのであり、文法的な正確さは実はあまり関係ありません。今回はみなさん通訳なしでコミュニケーションを取れていたのが非常に良かったです。
ひらの
3年前に『ガスー』がアヌシーのコンペに入って参加したときに知り合ったジョージアの作家さんたちや、日本の映画祭であった作家さんとの再開、以前からInstagramだけでつながっていたアーティストの方々、そんな面識のないアーティストから「私の友だちが、この映画祭にいるから会ってきて」と他の作家さんを紹介してくれるような連絡が来るなど、様々なつながりがありました。アヌシーは本当に世界中から人が集まるので、来ている作家さんと会う約束をして、会うだけでも上映を見る暇がないくらいです。
あとは、共通の友人を通じて、アメリカの制作会社「Titmouse」の社長ともたまたま会食する機会があり、翌朝のパーティーにも誘われました。バスや自転車を使っても1時間では着かないような遠い場所でしたが、必死で走って行きました。そのパーティーでは、Adult Swimやカートゥーンネットワークの人たちとも話せました。とにかくインターネットだけでつながっていた子たちと実際に会って仲良くなり、その子たちの友達とまた仲良くなるという流れが、たくさんあって、すごく楽しかったです。
ネットワーキングについて面白かったのは、「とにかく最初に話しかけるきっかけを決めておくといいよ」と言われたことです。例えば、「ひげいいね」と話しかける、Tシャツや靴が可愛いね、など、何か一つきっかけを作っておくだけで、すぐに友達になれるような環境がアヌシーにはありました。
金子
僕はもともと知り合いが多かったわけではないので、関口さんと同じように目が合った人とひたすら話していくという形でした。ゲーム制作者が短編アニメーションに興味を持っていて参加していたり、バスで偶然隣にいた人に話しかけられたり、普段日本ではできないような横のつながりができたと感じます。
土居
NeW NeWの公募枠作家のみなさんが目的にしているのは「国際共同製作につながるプロデューサーを見つけること」です。ただし、必ずしも自分の目的に合った人と直接話せるわけではありません。わらしべ長者のように繋がりができて、最終的にプロデューサーにつながるということもあります。
NeW NeWで各種事業を行うなかで「短編アニメーション作家はSNSをどう活用するべきか?」という質問を受けることが多いのですが、ひらのさんがひとつの好例だと思います。全世界でバズを狙うためのPRではなく、気の合う人、尊敬できる人を見つけて地道に繋がっていくという使い方です。結果的に、全世界から関係者が集まるアヌシーが「オフ会」のように機能することになります。
ピッチの経験
土居
今回のツアーでのメインイベントが、MIFA内でのパートナー・ピッチへの参加でした。ピッチをしてみて、どうでしたか?
関口
現場での対応力が求められるという印象でした。どういう会場でピッチするのかも当日になるまでわからない感じで。実際現場に行ってみたらスクリーンが想像以上に小さくて遠くて、人によってはスライドの文字が見にくいこともあったかもしれません。あと、原稿を現地で大幅に変更したのに、パワーポイントのデータは事前提出なので編集できなかったり。新しい原稿とスライドの内容がちぐはぐになってしまうので、当日初めて使うリモコンでスライドを行ったり来たりしたり、16枚分の大ジャンプをして対応したのでドキドキしました。でもアドリブ的にちょっと言葉を挟みながらリモコン操作して、そこでひと笑い取れたのはよかったです。
ひらの
想定通りにいかないなか、その状況からどうやって皆さんに楽しんでもらったり、この作品を一緒に作りたいと思ってもらえるようなストーリーテリングをしようか、とかなり試行錯誤しました。すごく良かったのは、僕らのピッチの2日前に「The EU-Japan animation residency」のピッチイベントがあって、それを事前に見たことでイメージが掴めたことです。アヌシーで行われるピッチの数はとても多いので、そういうのを見て、どうやるか作戦を練り直すことができたのは、すごく良かったです。
金子
会期中にみなで話し合って発表の仕方を調整できたのもよかったです。原稿を読み上げる方式で発表したのですが、例えば原稿を出すスマホをどこに置こうか、と。僕は水が入ったピッチャーのところにスマホを立てかけて、それをちらちら見ながら話しました。ただ、お客さんが前にいるので、そこだけ見てても変なので、お客さんに目をやったりとか、台本で最初に「こんにちは」と言った後にちょっとお客さんの反応を待って話すとか、かなりダイナミックにその場の雰囲気に合わせなければいけないなというのは、僕も皆さんと同様に感じました。
土居
ピッチのやり方に正解はありません。お客さんが喜んだからといって、それが商談につながるとは限らない。アヌシーには映画祭が主催するメインのピッチがあり、最終的にはそういったところに応募して採択されるようになるのがベストです。選出された段階で、賞金やレジデンスへの参加機会などなんらかの賞が保証されており、次の作品を作る機会につながります。メインのピッチ以外の場は、「自己紹介」に近いと言えるかもしれません。自分がどんな人間かをプレゼンテーションし、皆に知ってもらってコンタクトをもらえる機会を作る場です。映画祭や人との繋がりは、複数回重ねていけばいくほど深まっていきます。この事業を通じてそういった経験を重ねてもらうことが、直接的には何かに繋がらなくても、後になって「あの時のあれが元になっていたんだ」ということに繋がりやすくなる、という側面もあると思います。
パリ、シクリック
土居
アヌシーの後にはパリへ移動し、パリ日本文化会館で上映会を行いました。ここでは映画祭の観客というよりも、日本文化が好きな一般のお客さんやパリの関係者の方々に参加してもらい、上映とトークイベントを実施しました。
さらに、Ciclic(シクリック)という場所にも行きました。パリから電車で1時間ほどの場所にある、ヨーロッパ最大級のアニメーション・レジデンス施設です。日本でも人気があるアニメーション作家のボリス・ラベさんや、桑畑かほるさんとマックス・ポーターさんのデュオTiny Inventionsなどが滞在制作をしていました。日本にはなかなか無いタイプの場所ですが、皆さん、最後の訪問地であるシクリックに行ってみていかがでしたか?
金子
Ciclic周辺は田舎のような素朴で静かな佇まいがあり、初めは少し寂しさも感じましたが、本当にアニメーションだけに集中したい時にはすごく良いところだと感じました。小さな試写室で自分の作品の進捗を確認できたり、設備面も申し分ない印象を受けました。
関口
私も同じ印象で、世俗と隔絶された場所でアニメーションを作れるという特別な場所だなと思いました。
ひらの
僕は長野の富士見町在住なので、そこよりは都会でした(笑)。お店や映画館もあるし、休日はパリに遊びに行けるようでした。Ciclicでは、どうすればレジデンスに入れるか、具体的な条件を聞かせてもらいました。作品の傾向として2Dの手書きアニメーションがメインであること、フランスのプロデューサーが必要であることなど、具体的な話を聞けたのも良かったです。ハードルは高いと感じつつも、レジデンスという可能性をこれまで全く考慮していなかったので、こういう形で作品を作る方法があるんだ、と知れたのは大きかったです。
土居
短編アニメーションは、様々な補助金やレジデンス、機関制作の機会を組み合わせて資金調達するのが一般的です。Ciclicは、もらえるお金も非常に大きく、選ばれし精鋭たちが集まる場所です。将来的に皆さんがチャレンジする際の選択肢の一つとして頭に入れておくと良いのではと思います。
今回のツアーは、単に上映を見るだけでなく、ヨーロッパにおける短編アニメーション作家たちの生き方や生態を学ぶ機会だったと思います。このヨーロッパツアーを経て、改めて気づいたことや学んだことがあれば、一言ずつお願いします。
ひらの
僕にとっては、インターネットの世界だけの人たちだったアーティストたちと実際に会って話すことで、どういう環境で作品を作っているのか、どういうつながりがあるのかを個人的に知れたことが大きかったです。そのつながりの中で、「知り合いのプロデューサーが話したいと言っているよ」といった連絡をもらえたりと、新しい流れが生まれつつあります。人によっては”ネットワーキング”という単語を聞いて、少し身構えてしまうかもしれませんが、友達に会いに行く、という気持ちで行くとすごく楽しいし、これからどんどん広がっていくと思います。
関口
私は人前で話す時にすごく緊張してしまうタイプだったのですが、今回のツアーを通して、緊張する場面で「別人格を自分に降ろす」やり方が分かりました。「自分のことだけ考える」というのと、呼吸を「4秒かけて吸って、7秒止めて、8秒かけて吐く」というのを繰り返していると手の震えが止まります。
金子
日常的に作品作りをしているとどうしても作品そのものばかりに意識が向きがちですが、それを発表する場がどんな場所なのか、作っている人たちがどんな人物なのかなど、作るという行為を取り巻く環境についても、自分の描かで少しずつイメージが形作られてきたように感じます。